「お互いのカン」souer shine@千歳烏山


絶対やった方がいいって言ってくださったんですよ。それが何となく胸に響いて、やってみようかなって。

souer shine



text & photo by Nariya Esaki



「たとえばわたしはこれが好きなんですよっていうのがあるじゃないですか、でもわたしと趣味がまったく同じ人を見つけるのは大変なんですよ。たとえば20人いたら、そのうちわたしとまったく同じ趣味っていう人は1人いればいいぐらい」


つまりどういうものが売れるか分からなかったそう。だからいろいろなイベントに足を運んでお客さんとの対話の中でどういうものが売れるのか探っていったのだとか。もちろんイベントに足を運ぶと言っても身ひとつで行くわけじゃない。ネットショップにも関わらず商品(子ども服)も携えて出店までしていたのだ。


「インターネットだけじゃ絶対無理ですね。インターネットだけじゃなくて出店して、イベントに行って接客してる方が楽しいってことが分かる。そうするとお客さんと仲良くなったりして、そこからお客さんが買ってくれるんです」


確かにどれだけテクノロジーが進化しても、結局のところ人と人の関係性というのはそれほど変わらないのかもしれない。


「ネットを始めたきっかけはネットでいろいろできればいいなと思って始めたんですけど、でもネットだけじゃ厳しいんですよ。ネットって意外とお金がかかるんですよ。もちろん店舗は毎月の家賃だけでもお金がかかるんですけど、でもネットは知ってもらうのにもの凄いお金がかかるんですよ」


いわゆるSEO対策だ。もちろんネットショップはネットにしか存在しないのだから、知ってもらわない限りは誰も買ってくれない。店舗は前を通れば知ることは出来れるけれど――もちろんただ通り過ぎるだけの店の方が圧倒的に多いのだけど――ネットは知らなければ前を通り過ぎることすらない。そう考えるとまだリアルな店舗の方が可能性はあるのかもしれない。


もちろんそんな理由で店舗を始めたわけじゃない。イベントへの出店や、ときには近所の元コーヒーショップを借りて――空っぽのお店に什器など一式自分たちで準備して――出店したりしているうちに、常連さんに言われた一言が一番のきっかけだった。


「その常連さんが絶対やった方がいいって言ってくださったんですよ。それが何となく胸に響いたっていうか、ああ、やってみようかな場所があれば、と思ってたらこの場所を見つけたんです」



もちろん店舗をすすめてくれたのはその人が初めてではなかった。でもあらゆることがそうであるように、やはりタイミングが合致したのがそのイベント先で言われた一言だったという。そして何よりこの場所を見つけたことが一番大きかったかもしれない。


「もうお互いのカンですよね、中も見てないのに。奥行とかもないですし、何かできるスペースもちいさいんですけど。だって何にも(在庫も)置けないじゃないですか、隠れるところもないし、半地下なんでベビーカーで来るお客さんとかもいるから、凄い悩んだりしたんですけど、でもわたしも妹もすぐ"ここだ"ってなって」


やはり出逢いというのはあるのかもしれない。逆に言うとそれくらいの出逢いがなければやらない方がいいとさえ思う。だってシャッターが閉まってて中も見えないのに、そこまで想えるなんて、なんて素敵な出逢いだろうか。


しかも重要な部分以外は業者に頼むことなく、自分たちと友達だけのチカラでお店を完成させただけに、その想い入れは一際深い。


「自分たちで好きなように作りたかったんで、手作りで。もちろん大工さんに入ってもらった部分もあるんですけど、でも友達も夜中に手伝ってくれたり、朝までやってくれたりとか、そういういろんな人の協力があってやっと出来上がったんです。だからここには凄いいろんな想いが詰まってます」


自分たちの趣味だけじゃ売れないから、いろいろな人の意見を聞いて勉強もして来た。でもここには確かに彼女たちの「好き」が詰まっていると言ってもいいかもしれない。




(おわり)




souer shine


営業時間:2018年に閉店。

取材:2014年6月27日


Nariya Esaki

kosa10magazine主宰。テレビ業界からレコ屋店員を経て現在埼玉県北本市在住の二児のパパ。

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「好き」と生きる、「まち」と暮らす。