text by Nariya Esaki
©Archipel 35 - France 2 Cinéma - Titre et Structure Production
「フリー アーザ バード」と歌ったのはビートルズだったが、誰もがそんなことを思ったことがあるんじゃないだろうか。
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冒頭、カメラとマイクは電車に乗っている人々の頭の中や、ときにはヘッドフォンの音まで拾う。なんでもないはずのその日常の風景は、気づけば、あまりの情報量の多さにうんざりさせられる。しかも週に10時間、月に40時間、そんな場所に費やしていると思うと多くのは、自分の人生に照らし合わせて、自分のことかと思うと二度うんざりすることになるだろう。もし、それが飛行機だったら、きっともっとうんざりするに違いない。
そう、これはそんな男――飛行機に乗って分刻みに動く――ゲイリーについての話だ。
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でも彼はお金がないわけじゃない。少なくともヒルトンホテルに泊まれるくらいには――それがたとえ会社のお金だとしても――裕福だし、会社の権限だって持っている株主だ。簡単に言ってしまえば、それなりに成功しているベンチャー企業の重役だ。それに妻も子どももいる。何かあったようだけど、それについてはあまり深くは語られない――多くの映画はそちらに焦点を置きそうだが――おそらくそれは大した原因ではないのだろう。
「うんざりした、だから全部やめる」
彼は確かにそう言った。
でも本当にそうだろうか?
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妻との長い長いスカイプを終えて、観てるこちら側も充分にうんざりさせられたところで、ホテルのルームメイドのオドレーの話に切り替わる。そこはもちろん、ゲイリーが泊っているヒルトンホテル。でも彼女は大学を休学しているというそこそこ大きなことを親に内緒にしている、どこにでもいる普通の女の子だ。
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そんな彼女ももちろん、月40時間の通勤時間や、ヒルトンホテルだからといって、決してきれいに部屋を使ってくれる客ばかりじゃないことに、うんざりしている。でも親に内緒にしてまで休学して通うその場所に、本当に彼女はうんざりしているのだろうか。
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鳥のように自由になりたい。
そう思うとき、あなたは本当にそこから飛び出したいと思っているだろうか?いつもと違う場所から眺めて見れば、ひょっとすると違う答えがそこには待っているかもしれない。これはそんな映画。
2015年9月26日(土)より
ユーロスペース、新宿シネマカリテ(レイトショー)ほか全国順次公開
監督:パスカル・フェラン 『レディ・チャタレー』
出演:アナイス・ドゥムースティエ 『彼は秘密の女ともだち』/ジョシュ・チャールズ『いまを生きる』
2014年/フランス/フランス語・英語/カラー/128分/DCP/1:1.85/5.1ch
原題:Bird People/字幕翻訳:高部義之/配給:エタンチェ/宣伝:沼尾真未、cloud heaven
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