「ヒトとのつながり」cafe skratta@千歳烏山


会社員の方がいいかなと思うこともあるけど、そこで得られないものがあるからここをやりたいと思うんですよね。


cafe skratta



text & photo by Nariya Esaki 



2011年オープンということは、もうすぐ3年(2014年取材)が経とうとしている。何でもまず3年とは言うけれど、3年というのはお店にとっても決して短い時間ではない。少なくとも思いついてからの2年間よりも長い時間、ブレることはなかったのだろうか?


「うん、あんまりブレないかも。割と性格的にも頑固というか、ここはこう一本筋を通しておきたいみたいなところはあるから。ブレづらいのかもしれない」


そうは言ってもは3年となると、常連さんが出来たり、お客さんからの要望なんていうのも出て来るかもしれない。


「そこは来てくれるお客さんに合わせてやっていくのもひとつ、でも全部が全部聞いてたら成り立たなくなるわけで、そういうところはいつも悩みますね。揺らぐというか、でもまぁ自分次第だから。自分がこうと決めたら、もうそうしちゃいますけど、それがお客さんにとってどうなのかは分からないですけどね」


自分次第。それは口で言うほど簡単なことじゃない。迷ったり、悩んだりしたら、聴いてくれるだけじゃなく、ひょっとしたら答えまで出してくれるのが会社だけど、個人店はそういうわけにはいかない。誰かに相談して答えを出してくれたとしても、その答えに従ったところで責任は全て自分に降りかかってくるのだから。


「そう、やるもやらないも自分次第ですからね。そこが難しいけど、面白いのかな。自由があるっていうか、なんて言うんだろう?組織の中で働くと、その組織の決まりの中で自由だけど、こっちは自分の価値観の中で自由だから。まぁそれでお金がすごい入ればいいですけどね(笑)」



「でも楽しいとか自分の生きがいとか大事だと思うんですよ。ただそれだけだと生きていけないじゃないですか。どうやって生きていくのってなったら、働いてお金をもらわなきゃいけないじゃないですか。なんか汚いようだけど、でも無視しちゃいかないかなと思う」


帰れば働いてるサラリーマンの旦那さんを見ると余計にそうなのかもしれない。ましてもともとは公務員保育士。育児休暇ももらえて、退職金ももらえる。考えれば考えるほど、保育士の方がいいようにも思える。


「戻ろうと思ったら、たぶん戻って、頑張って働くと思うんですけど。確かに揺れますけどね、自分の生涯を考えたときに。でも結婚もしたし、親も年をとってくるし、子どものこととかも考えるし、そんなこの先のことを考えるとやっぱり会社員の方がいいかなとか思うときもありますけど、そこで得られないものがあるからここをやりたいと思うんですよね」


女だからなんていうとマイナスなイメージもあるけれど、でも女だから、子どもを産むと出来なくなることがどうしても多くなってしまうのも確か。


「もし子どもとか出来ちゃったら、絶対にしないと思うんですよね。もうだってそっち優先で、待ったなしの生活が続くわけで。でもわたしの理想としてはここで妊婦になって、ここをやりながら育てたいのは理想ですけど。現実難しいかなとは思うんですよ。ここにいる間はおんぶしながらやればいいじゃんとか言われますけどね(笑)」


それはそれで見てみたい気もするけれど、現実的に考えれば難しいのも確か。でもそこからちょっとしたつながりが産まれそうな気もする。ここを始めていろいろなヒトとつながったように。



「まちですか、ヒトって感じですね。ヒトのつながりっていうか、まぁ2階なんでつながりは少ないですけど。でもヒトとヒトとのつながりでやり取りが成り立ってるじゃないですか。ヒトがいてヒトが来て、なんて言うかな、とにかくヒトとのつながりは凄い感じますね。まぁ当たり前ですけど、でもたぶん前だったら楽しい雰囲気のところとか、人がいっぱいいて買い物するところとか、っていう目線でしたけど、お店を始めて、ああ、ヒトってつながって成り立ってるんだなって思いました」




(つづきます)






cafe skratta


営業時間:2017年に閉店

取材:2014年9月8日


Nariya Esaki

kosa10magazine主宰。テレビ業界からレコ屋店員を経て現在埼玉県北本市在住の二児のパパ。

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「好き」と生きる、「まち」と暮らす。