ミュージシャンなんて博打のような商売とは言うものの、ぼくはかなり安定した道を歩んでるかも。
原田 茶飯事
edit by Nariya Esaki
photo by Souichiro Yamashita
「1回1回のライブがそんなふうに大きなフェスに繋がるかもっていう気持ちでやっててよかったなっていうか、毎回これが最後のライブくらいの気持ちでやるっていうのも大事なんかなと」
長野のりんご音楽祭も、愛知のトヨタロックフェスティバルも、偶然そのライブハウスに居合わせた主催者から声をかけられて始まった。それを人は運と呼ぶかもしれない。でもそこには当然、いい音楽があって、そして何より日々のそんな姿勢があったからこそ出来た繋がりと言うべきだろう。
そしてそれはライブを全力でやるだけではなく、かつては若気の至りで出来なかった年齢とともに積み重ねた腰の低さはもちろん、何より音楽との付き合い方にあるのかもしれない。
「なんかリスナーをバカにするような音楽活動はしないようにしていきたいですね。『本当にいいもの』って自分が思えるものしか売りたくない、作り手の意地というか…確実に売れるからって言ってバカ高い値段で凄いしょうもないものを売って得たお金にそんなに意味を見出せない気がして、商売としては絶対そっちの方が成功してるし、やっぱお金があると人も雇えるし、必要なことやとは思うんですけど、そういう非効率的なやり方の方が向いているというか、音楽とのかかわりとして、豊かに生きていけるような...うん、音楽を嫌いにならんように生きてるって感じですかね」
「好きなことを仕事にするってことが嫌いにならないように努力してるというか、ぼく飽き性なんで、特にその飽きないように努力するっていうのも必要やし、それはいろんな音楽を聴くようにしたり、探したりとか、意識して貪欲になるように仕向けないと、自分が聴く側として、昔よりも飽きてるのは確実で、昔の杵柄だけでやってると新鮮さもなくなっていくやろうし、自分自身に飽きそうやし、そうなったら恐いなと思って」
商いは飽きないように、なんて冗談のようだけれど、しかしそれが好きなことだったら尚更そうかもしれない。
「でもこういうインタビューで、やりたいから音楽やってます。みたいにバシッて言えるくらいに音楽に没頭して出来てたら最高なんですけどね。何十年後も、別に戦略とかも考えてない。ただ好きでやってるみたいな感じで言えたらいいですよね」
確かに今や、ミュージシャン自らがブログやフェイスブック、ツイッターで発信するのが当たり前の時代。でも彼の年間100本以上のツアーを見ていると、結局は人と人の繋がりでしかないんじゃないだろうか。
「原田茶飯事だから読んだとか、原田茶飯事だから最高な夜が出来たみたいな風に評してくれる人の場所には、年に1回は行きたいなって思うし、それがどんどんツアーをするごとに増えていってますね。一生の付き合いになるかもしれませんが、よろしくお願いしますって感じの場所が増えて、そういう意味ではつぶしの利く立ち位置なんじゃないかなと思います。ミュージシャンなんて博打のような商売とは言うものの、ぼくはかなりローリスクで安定した道を歩んでるかも」
そんな彼にまちのことを訊いてみると、こんな答えが返って来た。
「ツアーに出たりするといろいろその土地、その土地でおいしいものもありますけど、結局メシっていうのは、誰と食べるかで変わるし...だからやっぱ人ですかね。いろいろ考えた結果。ツアーに行って『帰って来たよー』って言える場所がいくつかあるっていうのが、普通に生活してる人ではあまりない感覚かもしれないですね。実家がいっぱいあるみたいな。『歓迎してくれる人がいるまち』がいっぱいあるっていうのが、音楽やっててよかったことのひとつですかね・・・もしかしたら一番良かった部分かもしれない」
(おわり)
原田茶飯事
5月2日大阪うまれ、東京在住のA型。芸名に水が絡むと運気があがるとのことで2007年頃から原田茶飯事と名乗っている。 ソフトロックやMPBの洒落っ気、茶目っ気を感じさせながらも口から半分 魂の出たようなステージングは必見。ソロとバンドを使い分け節操無く全国を渡り歩く全方位型シンガーソングライター。
公式website: http://haradasahanji.com/
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