音楽と生きる。Vol.1 「原田茶飯事」 中編


やっぱり続けられてる人っていうのは、ちゃんと愛されてる人なんやなっていう。

原田 茶飯事


edit by Nariya Esaki

photo by Souichiro Yamashita



「まぁ、運がとにかくいいですね、振り返っても。要所要所で人に引っ張っていってもらってるって感じることが多いですね。だから後輩のミュージシャンとかにどうやって音楽だけで食べていけるかって聞かれても『結局、運じゃない?』みたいなところに落ち着くというか」


もちろん運と言っても「お祈り」や「お布施」をしたからと言ってやって来るわけじゃない――それはそれで大事かもしれないが――そこに良い曲や良い歌があるから運は...、いや、人が寄ってくるのだ。


それはそもそも大阪からひとり上京しても、ここまで音楽でやって来れたのは、クリームチーズオブサンの実績(≒人気)があったからに他ならない。何せほとんど営業することなく東京での音楽活動を始めることが出来たのだから。


「結構それも運がよくて、もともとぼくのことを音源とかで聴いてて『東京にいるならぜひうちで』ってライブハウス以外の場所(カフェなど)からも出演依頼のオファーがあったり。だから自分から売って出て、ここでやらせてくださいみたいなことはあんまりしなかったですね。それだけに東京に来たときから調子に乗っていたというか、『場所はいくらでもあんねん』みたいなところがあって、ギャラの交渉も強気でやってました」


若気のいたりと言ってしまえばそうかもしれない。でもそれで生きていくと決めた以上は――ライブハウスなんてお金を出せば誰だって出れるのだから――たとえリスキーであってもやるしかないのだ。


「そもそも人気も集客も箔もないのに、それでお金をせしめようっていうところが非難されてもおかしくないって考えと、自分の値段は自分でしか付けられないし、自分が弱気ではいつまでもなめられっぱなし、みたいなところのせめぎ合いで...難しいですね、いまだに。人気商売なんで。そもそもこういう内容を取材で答える自体が、たぶん良くない(笑)」



いえいえ、でもわたしが聞きたかったのはそういうことだったし、何よりミュージシャンになりたい人はたちはそういうことを聞きたいんじゃないだろうか。でもこれは何だかミュージシャンだけじゃないような気がしている。


「音楽やってると諦めが結構肝心で、多少嫌われてもいいって思ってる人くらいしか音楽続けられないんじゃないかなって気もします。でもぼくより年上のベテランミュージシャンの人とかって総じて腰が低かったり、人間が出来てる立派な人が多かったりして、やっぱり続けられてる人っていうのはちゃんと愛される人なんやなっていう。特に巡業してるミュージシャンは総じて人に愛される魅力を兼ね備えてる人が多い気がして、そういうの見るとああ、自分ももっと努力せねばって思わされますね」



「事務所にもレーベルにも所属せずにあちこち巡業してるミュージシャンにとっては、日々の食い扶持の確保で大変なんですけど、その中でも誰と共演してるかとか、どの場所でやってるかとか、いわばブランドイメージというのもあったり。自分が今の音楽の系譜の中でどの位置に行きたいんかっていうのが見えてたら、自ずとどこに出たいとか、どこでどういう風な活動してる人と思われてみたいなのが見えて来る気がします」


だからこそ長野の「りんご音楽祭」や愛知の「トヨタロックフェスティバル」のようなフェスに呼ばれるようになったのだ。




(つづきます)



原田茶飯事


5月2日大阪うまれ、東京在住のA型。芸名に水が絡むと運気があがるとのことで2007年頃から原田茶飯事と名乗っている。 ソフトロックやMPBの洒落っ気、茶目っ気を感じさせながらも口から半分 魂の出たようなステージングは必見。ソロとバンドを使い分け節操無く全国を渡り歩く全方位型シンガーソングライター。 

公式website: http://haradasahanji.com/  

Nariya Esaki

kosa10magazine主宰。テレビ業界からレコ屋店員を経て現在埼玉県北本市在住の二児のパパ。

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「好き」と生きる、「まち」と暮らす。